第三種再生医療」とは?代表的な治療例と導入メリット
競合ひしめく自費診療の領域において、患者様に選ばれ続けるための「次の一手」をお探しではありませんか?
近年、患者様の「根本から治したい」「より自然で安全な若返りをしたい」というニーズが高まる中、注目を集めているのが「再生医療」です。
しかし、「再生医療=大病院や研究機関が行うハードルの高いもの」というイメージを持たれている先生も多いかもしれません。
実は、法律によって分類された「第三種再生医療」は、適切な手続きと安全管理体制さえ整えれば、クリニックでも十分に導入が可能な領域です。
本記事では、医療機関の新たな収益の柱となり得る「第三種再生医療」について、代表的な治療例、そして導入のポイントまでを分かりやすく解説します。
再生医療新法における「第三種」の立ち位置
2014年に施行された「再生医療等の安全性の確保等に関する法律(再生医療新法)」では、人の生命や健康に与えるリスクに応じて、再生医療を3つのクラスに分類しています。
| リスク分類 | 主な細胞・治療の特徴 | 該当する治療の例 |
| 第一種(高) | iPS細胞、ES細胞、他家の細胞 | 脊髄損傷に対するiPS細胞治療など |
| 第二種(中) | 自己の体性幹細胞を培養するもの | 脂肪由来幹細胞による関節治療など |
| 第三種(低) | 細胞の培養を伴わないもの(※一部例外あり) | PRP療法、CGF治療など |
第三種再生医療は「もともと細胞が持っている機能と同等の範囲で利用するもの」と定義されており、3つの中で最もリスクが低く、多くのクリニックで導入されているクラスです。
第三種再生医療の代表的な治療例と解説
代表的な第三種再生医療の例を下記に示します。
自己多血小板血漿(PRP)を用いた老化した皮膚の再生療法
美容皮膚科や形成外科において、非常にニーズが高く導入事例も多い治療法です。
対象患者・疾患
・加齢によるシワ、たるみ、ちりめんジワに悩む方
・ニキビ跡(クレーター)や毛穴の開きを改善したい方
・目の下のクマや、首・手の甲のエイジングサインが気になる方
治療内容
患者自身の血液を採取(数十ml程度)し、遠心分離機にかけて血小板を濃縮した「PRP(多血小板血漿)」を抽出します。
これを、気になる部位の皮下や真皮層に注射器やマイクロニードル等を用いて注入します。
血小板から放出される様々な成長因子(PDGF、TGF-βなど)が線維芽細胞を刺激し、コラーゲンやエラスチンの自己産生を強力に促します。
メリット
自己の血液のみを使用するため、アレルギーや拒絶反応のリスクが極めて低いのが最大の特徴です。
ヒアルロン酸やボトックスのような「異物を入れる」「筋肉の動きを止める」治療に抵抗がある患者層に対して、「自分自身の細胞を活性化させる自然な若返り」という強力なアプローチが可能になります。
自己多血小板血漿(PRP)を用いた薄毛治療
頭髪治療専門クリニックだけでなく、一般の皮膚科や美容クリニックでのメニュー拡充として注目されています。
対象患者・疾患
・AGA(男性型脱毛症)、FAGA(女性型脱毛症)の患者
・加齢に伴う全体的な髪のボリュームダウン、抜け毛に悩む方
・既存の投薬治療で効果を感じにくい、または副作用で投薬ができない方
治療内容
抽出した自己PRPを、細い針などを用いて頭皮(薄毛の気になる部位)に直接注入します。
PRPに含まれる成長因子(VEGF、FGFなど)が毛母細胞を直接活性化するとともに、頭皮の血管新生を促して血流を改善し、乱れたヘアサイクル(毛周期)を正常な成長期へと導きます。
メリット
男女問わず適用可能である点が大きな強みです。
特に女性の薄毛(FAGA)は有効な治療薬が限られているため、PRP療法は有力な選択肢となります。
また、内服薬との併用による相乗効果も期待できます。
多血小板血漿(PRP)を用いた整形外科領域の治療(関節腔内を除く)
スポーツ整形外科や一般整形外科において、難治性の痛みに対する新たな保存療法として急速に普及しています。
対象患者・疾患
・テニス肘(上腕骨外側上顆炎)、ゴルフ肘、アキレス腱炎、足底腱膜炎などの慢性的な腱・靭帯の炎症
・肉離れ、靭帯損傷などのスポーツ外傷
治療内容
超音波(エコー)画像診断装置で損傷部位を正確に確認しながら、抽出したPRPを損傷した腱や靭帯、筋肉に直接注射します。
血小板由来の成長因子が、血流の乏しい腱や靭帯の組織修復・再生プロセスを促進します。
メリット
従来のステロイド注射は即効性がある反面、頻回投与により組織の脆弱化(腱断裂など)を招くリスクがありました。
PRP療法は組織そのものの修復を促すため、根本的な治癒を目指すことができます。プロスポーツ選手の早期復帰から、中高年のしつこい関節周辺の痛みまで幅広く対応可能です。
※重要: 変形性膝関節症など、PRPを「関節腔内」へ直接投与する治療は、健康被害のリスク等を考慮し「第二種再生医療等」に分類されます。届出の際は投与部位の明確化が必要です。
自己血由来成分CGFを利用した口腔内の骨及び軟組織の再生医療
歯科・口腔外科領域において、インプラント治療の安全性と成功率を高めるために導入されています。
対象患者・疾患
・インプラント治療にあたり、顎の骨の量や厚みが不足している患者(骨造成:GBRが必要な方)
・抜歯後の治癒不全リスクが高い方、または歯周病により歯槽骨が吸収されている方
治療内容
患者から採血した血液を、抗凝固剤や添加物を一切入れずに専用の遠心分離機にかけます。
これにより、フィブリン網目が密に形成されたゲル状の塊「CGF(Concentrated Growth Factors)」を作製します。
これを人工骨などの骨補填材と混ぜて移植したり、抜歯窩に直接埋め込んだりします。
メリット
完全無添加の自己由来生体材料であるため安全性が非常に高く、感染リスクを低減できます。
CGFは優れた止血効果を持つだけでなく、成長因子を長期間にわたって徐放するため、傷の治りを早め、術後の痛みや腫れを軽減します。
また、骨再生の「足場(スキャフォールド)」として非常に優秀に機能します。
悪性腫瘍に対する自家NK細胞療法
腫瘍内科や免疫療法クリニックにおいて、標準治療を補完する目的で提供される治療です。
対象患者・疾患
・各種の固形がん(胃がん、大腸がん、肺がんなど)の患者
・手術や抗がん剤治療の前後で、再発予防や全身状態の改善を目指す方
治療内容
患者の血液(数十ml)を採取し、体外の細胞培養加工施設において、約2〜3週間かけて血液中のリンパ球(特にがん細胞を直接攻撃する性質を持つNK細胞)を選択的に増殖・活性化させます。
この培養された自己細胞を、点滴で再び患者の体内に戻します。
※分類のポイント: 「細胞の培養」を伴いますが、iPS細胞や体性幹細胞などの「幹細胞」ではない体細胞(リンパ球)の培養・加工であるため、第一種・第二種ではなく第三種再生医療等に分類されます。
メリット
抗がん剤のような強い副作用(脱毛、激しい吐き気など)が少なく、患者の体への負担が非常に軽いのが特徴です。
患者自身の免疫力を底上げすることで、がんに対する攻撃力を高めるだけでなく、QOL(生活の質)の維持・向上に寄与します。
その他
その他にどのような第三種再生医療が申請されているかを知りたい場合は、e再生医療とwebサイトに申請された一覧が開示されています。
下記のURLより確認することができます。
最大の壁は「書類」と「手続き」。つまずかないための3つのポイント
治療自体は自院の設備で対応可能でも、多くの医療機関が導入をためらう、あるいは途中で頓挫してしまう理由があります。
それは「地方厚生局への膨大で厳密な書類提出」です。
「認定再生医療等委員会」の審査を通し、厚生局に受理されるためには、以下のポイントを押さえた運用設計が不可欠です。
「説明同意文書(IC)」から全体へ
提供計画書や院内の標準作業手順書(SOP)を作成する前に、まずは患者様向けの「説明同意文書」を確定させましょう。
ここを軸に専門用語へ落とし込むことで、書類間の「採血量」や「対象疾患」の細かな矛盾・不整合(最も多い差し戻し理由)を防ぐことができます。
ひな形を鵜呑みにせず「自院の実態」に合わせる
厚労省や委員会のフォーマットをそのまま流用すると、実際の院内動線や使用機器とズレが生じることがあります。
誰が、どこで、どの遠心分離機を回し、どう記録をつけるのか。
「自院のオペレーション」として落とし込むことが、審査通過の鍵です。
「年1回の定期報告」を見据えたカルテ管理
計画が受理されて終わりではありません。
治療開始後は、厚生局への定期報告が義務付けられています。
導入準備の段階で「症例数」や「製造記録」をどう集計するか、事務フローを構築しておくことで、その後の負担が劇的に軽減されます。
適正な手続きが、患者様からの「究極の信頼」に変わる
第三種再生医療の導入にあたって、厳格な法規制をクリアし、国が定めた基準に則って安全な治療を提供できる体制は、患者様にとって「このクリニックなら安心して任せられる」という究極の信頼(ブランド)に直結します。
他院との明確な差別化を図り、患者様の多様なニーズに応える新たな治療の柱として。
まずは、自院の強みを活かせる治療領域から、第三種再生医療の導入のお役に立てば幸いです。
